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辻井伸行ピアノリサイタル in パリ




 これほどまでに柔らかく色彩に満ちた音色を、自分はこれまで耳にしたことがなかったかもしれない。音で光を紡いでいるような、そんな演奏だった。

 全盲の日本人ピアニスト、辻井伸行のコンサートを、仕事の後に聴きに行った。会場のシャンゼリゼ劇場には、多くのフランス人と日本人の観客が詰めかけ、演奏が終わっても拍手が鳴りやまず、彼は、なんと4回ものアンコールに応じてくれた。

 特に圧巻だったのはアンコールの1曲目と4曲目。いずれも、彼自身の作品ではないかと思われる。1曲目のあの柔らかく慈しむような感じも、最後の曲のほとばしるような感じも、本当に素晴らしかった。

 我々の精神の中に、光り輝く領域と暗く淀んだ領域とがあるのだとすれば、自分は、その輝ける部分の方向に、一歩でも近づいていきたいと思う。彼の心に広がる情景には、光が満ち溢れているのだろう。彼が奏でる音は、そんな美しい輝きに満ちていた。

2021年11月








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