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”ルーブル危機”に思う、ロシア人の感情のバルブについて



 昨今のルーブル安でロシアの巷は大混乱に陥っているのではないかと、「西側」の多くの人が思っているようだ。欧州の拠点のローカル社員と電話で話していてもよく聞かれるし、日本からも時々聞かれる。でも実際には、確かに景気はドン冷えで、ビジネスの切り盛りも大変だが、巷自体は概ね平穏である。


 先週来た出張者も、うちのローカル社員にそんな質問していた。彼女たちは「スーパーのものもいろいろ値段が上がって大変です。」とはいいつつも「まぁでも、今回が初めてではないですから。」と、淡々と答えていた。そんなやりとりの中である社員が口にした言葉がふと耳に留まった。


 「私たちロシア人は、その時々に合うように対応することが出来るのです。」


 そうだった。ロシア人の感情には、「入」の蛇口にも「出」の蛇口にも、大きなバルブがついているのだ。それは、四季の営みの中に既に組み込まれている。冬になれば感情のバルブを閉め、内向の季節に入る。春が来て新緑が芽吹き始めると同時に感情のバルブを開け、その先に訪れる初夏に合わせて一気に栓を全開にして、冬の間貯め込んだエネルギーを爆発させる。女性たちが最も美しく見える季節だ。


 それと同じように、経済が「夏」だったころ、彼らは実によくお金を使った。今の経済状況は、そんな季節の巡り合わせの中で普通にやってくる冬眠期に入ったということだけなのかもしれない。


 ルーブル危機について報じられるときには、どうしてもそこに、ざまみろロシア、ざまみろプーチン的なドライブが少しかかっているように見える。実際、言われても仕方がない部分もあるだろう。それはそれで正々と批判すれば良い。


 ただ、世界の皆様、あなたたちは、ロシアの「冬」を知らない。そういうコアな要素を見落として物事を決めつけるのは、いろんな意味で危険なのではないでしょうか。ロシア人をあまり甘く見ないよう用心した方がいい。「冬」にいじめられ慣れていて、子供のケンカでいうと、「泣いてからが強い」のがロシア人ですから。

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