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コロナ事件簿

 パリのコロナ規制はかなり解消され、うちの会社のオフィス勤務も、先週から、希望すれば週3回までOKになった。それまでの週1回だけだった制限に比べれば大きな進歩で、何もかも手探りで苦しんでいた転入者には大いなる僥倖である。出勤する社員の数も、それまでは、広いオフィスに2~3人がぽつねんと散らばって仕事をしているだけだったものが、10人前後の社員を見るようになった。

 

 そんなコロナ解禁下で事件は起こった。自分がトイレから出てくると、近くにいたフランス人の女性社員がぎゃははと笑って、最初フランス語で、自分がわからないと気が付くと英語で、“あなたそこ女子トイレよ。”といった。

 

 えっつ?こっちとしてはびっくりである。殆ど人がいないオフィスで、週に1回だけの出勤だったとは言え、2か月に渡りそこを使い続けていたのである。“ほら!”といって彼女が、ずっと開けっ放しになっていた手前の扉を指さすと、確かにそこにはしっかりと女子マークが貼られていた。オフィスのトイレは、手前の小部屋に洗面所があって、そのさらに奥に本丸のトイレ部屋がある構造で、その洗面所に入っていく方の扉が開けっ放しで、そこに女子マークが貼ってあったのである。

 

 ということで、何とかその場は笑い話で切り抜けたが、2か月に渡り、坂本が女子トイレを使い続けていたというのは、やはりけっこうな事件と言わざるを得ない。いずれにせよ、その時は、オフィスをぐるりと回って反対側にある間違いなく男子マークのついているトイレに行った。

 

 午後、再びそのオフィスの反対側のトイレに行くと、手前の扉が閉まっていて、工事現場で見かけるような、なにごとかを忠告するマークと共に、なにやらフランス語が書いてあった。イメージ、“修理中につき使用不能”といった感じである。しょーがねーなーと思いながら、自分の席に近いほうのトイレに戻ってみると、例の禁断の女子トイレと向い合せになっている男子トイレの扉にも、その“修理中につき使用不能的”な貼り紙がしてあった。そうだ。そもそも、この貼り紙があったので、その対面にあるトイレを、男女兼用と認識し使っていたのだ。

 

 困ったことである。向こうもこっちも使用不能とか、一体どうするよ・・・。と、その扉の前でしばし途方に暮れていると、午前中の女性社員が、“なんかまたどうかした?”と声をかけてくれたので、“これって・・・どういう意味なんだろう?”と聞いてみると、“ああこれ?One person at a time(ご利用はおひとりづつ)よ!”と。

 

 そりゃまぁ、そうだろうよ。用を足すとこも一個しかねーんだから。そんなこと、わざわざこんな注意喚起レベルの高そうな貼り紙で書かないで欲しい。まったく人騒がせな。

 

 まぁ、落ち着いて文字を読めば多少の意味は推測できたかもしれん。文字よりこのマークで勝手にNGと判断したのが己の敗因でしたな。いずれにせよ、フランス語をとっととマスターしようと改めて心に誓った金曜の午後3時であった。

 

 ちなみに自分は、モスクワで、一つの部屋に二つの便器が並ぶナゾのトイレを見たことがある。写真ご参照。





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