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中陰

 出国間際の超多忙な毎日から、倒れ込むようにパリ入りしてから、丸2週間になる。中陰(ちゅういん)とでも呼ぶべき2週間だった。中陰とは仏教の用語で、前世の死後、次の生を受けるまでの刹那、幽体となって漂っている状態である。

 

 最初の1週間は、とにかく疲れ切っていて、かつ隔離でずっと薄暗い部屋の中にいたので、まさに死後の世界にいるような感じだった。先週末、初めて街を歩いて再生の兆しを感じ、週中は、コロナで様々な制約があることもあって本当に遅々とではあるが、こちらでの業務と生活の立ち上げを始めた。

 

 前職での申し送り事項で、どうしても出国前に片付かなかったものの幾つかも、この1週間に引き渡すことが出来た。また、3月までの1年間の組織業績について、日本側で行きかっている幾つかのメールも見たが、既に遠い別世界の話しのようで、死してあちら側の世界に行った後、かつて一緒に過ごした人たちの“読経”を聞くのはこんな感じなのだろうかと思ったりもしたが、少し大げさかもしれない。

 

 まぁ、いずれにしても、職業人としての死と再生であることには変わりはないだろう。それが、転勤というシステムの偉大なところである。




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