読了「レパントの海戦」
塩野七生「レパントの海戦」、読了。これにて、「コンスタンティノープルの陥落」「ロードス島攻防記」からなる三部作の全てを読み終えたことになる。 この三部作に描かれているのは、何事かを請け負っている男、それを成すことのみに全てを捧げている男たちの物語である。そのテーマは、三部作の完結編となる「レパントの海戦」において、より鮮烈である。 「何のために闘われる?」 これから海戦を迎える船上で、総司令官であるオーストリア公に問われた老将は、白髪を海風になびかせながらこう答える。 「必要だからです、殿下。それ以外には何もない!」 託す、ということの重さについて考えさせられるのは、何かあっても、一旦投げられた賽は簡単には変えられない、海の上の話しだからだろうか。 合理性とは全く別の基軸で動く政治や思惑というものが厳として存在し、むしろそれが、全体の趨勢にあまりにも決定的な影響を及ぼす。それもまた事実なのだ。 事を成すのに必要なのは、覚悟と技術である。必ずしも、一人の人間が、その両方を体現する必要はない。問題は、それらを阻害する要因をどうミニマイズするか、質的にも量的にもベストの覚悟と技術を、如何に戦場に現出せしめるかにある。