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中3 大倉山


 息子が所属する中学校のバスケ部の試合を見に神戸大倉山の中央体育館に行った。強いチームらしくこの日も勝って、ベスト4までもう一歩というところまで来ている。  息子は、我が息子なので当然というか、レギュラーなんかではなく、補欠でもないようで、ボール拾いのようなマネージャーのような立ち位置に自分の居場所を確保しているようだった。  それでも辞めずに最後のシーズンを迎えている事を評価してやりたいと思う。運動が苦手な人間が感じる悲哀は、本人にしか分からない。  いいんだ。君が勝負する分野がそれでなくても。何か、俺はこれだと思えるものを見つけて、そこで勝負すればいい。君の父が、これだと思えるポジションを確保したのは、つい最近の45歳になってからである。  大倉山は自分が今の息子の歳だった中3の頃、毎週末通った街でもある。被服系の専門学校の校舎で毎週土曜に開催される予備校の模試を受けに来ていた。全国の公立高校の過去の試験を朝から受けて、午後にはその解説がある。校舎の薄暗い廊下の突き当たりには、次の週に成績優秀者のリストが貼り出された。  その校舎の隣には、ラーメン屋があった。自分が大学生として神戸の街にいた頃、市内のあちこちに店を出して、今でもネットで時々名前を見かける。  試合の後、ふと思いついて、当時予備校があった場所に足を運んでみた。驚いた事に、今でも当時のままと思われる校舎があった。隣のラーメン屋も記憶のままである。  当時は自分で金を払ってラーメンを食べるなんて、考えてみた事もなかった。空いていたらそこで昼メシを食べようと思ったが、案の上、店の外まで行列が出来ていたので諦めた。午後には、娘を自由研究のための地元の史跡巡りに連れて行かねばならない。  30年前の自分の歳の息子がいて、当時のままの校舎とラーメン屋があって、30年を経ても、僕はまだ、そのラーメンを食べられずにいる。  まぁ、人生、そうしたもんでありますな。


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