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ロン、逝く


 慌ただしくしていた週中、実家の愛犬、ロンが他界したと聞いた。もう16歳だったから、犬としては大往生だったと言っていいだろう。  ロンが生まれたのは1998年7月25日。自分と妻の結婚式の日だった。名前は、父が付けた。ロナルド・レーガンからとったらしい。  その後、自分達3人兄弟はそれぞれに結婚して、2人づつ子供を授かって、一族は、5人から14人になった。帰省すると、子供たちとロンとでよく散歩に行った。  4年前の5月、父が癌で急に他界した。アムスにいた僕らは、その瞬間に間に合わなかった。忌引きの休暇を終え、アムスに帰る前日の夕暮れ時、子供たちが、家の近くの公園でロンと遊んでいた。父も、そこに一緒にいるような気がした。  一人になってしまった母の元にロンが一緒にいてくれているのは有難かった。でも、ロンは徐々に年老いていき、ここ1年ほどは、目に見えて衰えが進んでいた。  自分が本帰国で帰るまで、なんとか頑張ってくれよな。  従妹たちが集まって大騒ぎになっている実家の片隅で、そう彼に話しかけるのが、ここ暫くの自分の帰省時の習慣のようになっていた。でもさすがに、この8月の帰国の時は、もう次はないかもしれないと思っていた。  来週の自分の帰国に間に合わなかったのが残念だが、亡くなる直前、妻と娘が、最後のお別れに行って抱っこしてくれたので、ロンも嬉しかったろう。  ありがとう、ロン。どうぞ安らかに。


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