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羊男と出会う


 出張があったわけでもないのだが、なんだか妙に疲れた1週間だった。或いはそれは、慌ただしい来週分の繰り上げも含めて、週に2回のロシア語レッスンを受けたせいかもしれない。  予定してたお客さんとの飲み会が流れてしまったけど、そのまま帰るのもなんなので、ホームグラウンドの一番星で一人で飲んだ。悪くない。ビールを飲みながら、読み残していた村上春樹の「羊を巡る冒険」の続きを読んだ。羊男が出てくるあたりから、話しは急速にリアルになる。 「どうしてここに隠れて住むようになったの?」 「戦争に行きたくなかったからさ。」 「どこの国との戦争?」と僕は訊ねてみた。 「知らないよ」羊男はこんこんと咳をした。 「でも戦争に行きたくないんだ。だから羊のままでいるんだよ。羊のままでここから動けないんだ。」  そう、僕は、戦争のことを書こうとしている。とりあえず今は、ロシアとドイツがやった血みどろの戦争について、その激戦の地を訪れて、そこで起こったことの事実を調べて、自分なりに理解したことを文章に書き留めている。それはいずれ、日本という国が実際に関わった戦争について書くための準備運動でもある。その作業のどこかで、僕はきっと、羊男に会うことになると思う。  店のBGMでは、井上陽水が、ファンキーなアレンジの「アジアの純真」を歌っていた。オリジナル、パフィー版のアレンジは奥田民生。ELO、ジェフ・リンへのオマージュ。  今週はこれにておしまい。来週もまた、頑張りませう。


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