Отопление(アタプレーニエ)
モスクワの初夏の恒例行事、水垢離(みずごり)ウイークが今日で終わる。いや、「終わるはず」である。丸々1週間、シャワーから全くお湯が出なかった。気温が25度ぐらいあるから、まぁなんとか耐えられるが、それでも水にかかる前には結構な覚悟がいった。 モスクワをはじめ、ロシアの住居は街ぐるみの温水集中暖房で温められている。Отопление(アタプレーニエ)というらしい。この地では、街のど真ん中にある工場の赤白ストライプの煙突からモクモクと白い煙を吐いている光景があちこちで見られるが、その工場で天然ガスをガンガン炊いて作ったお湯が、配管を通って街中に供給されているのである。各部屋には蛇腹の暖房設備がついていて、その中をお湯が流れて部屋が温まる。冬場でも、部屋の中は半袖、短パンで過ごすのが普通で、時には暑すぎて窓を開けて氷点下の空気を取り込むことすらある。日本と違って冬の朝に布団から出たくなんて状況は全くない。 シャワーのお湯も同じシステムで供給されるらしい。そのせいか、お湯はほんのりと(ある時はかなり強烈に)鉄錆色をしている。このシステムの保守点検のために、毎年初夏になると、地域ごとにお湯の供給が一定期間止められるのである。 1週間もお湯を止められるなんて!という気もするが、一応事前に通知もあるし、そうはいっても1週間でなんとか済むのだから、旧共産時代やその後の混乱期に比べれば遥かにマシと思うべきであろう。以前は、初夏の時期に間違いなくあるということ以外は、それがいつ始まるのかも、一旦始まったものがいつ終わるのかもわからなかったそうである。 このアタプレーニエが機能しなくなると、冗談抜きに冬場部屋の中に氷柱が下がることになる。まぁ、そう思えば、このシステムの有難さを噛みしめながらの水垢離といったところか。南無。