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Barcelona 14年後


 僕が最初にバルセロナを訪れたのは1982年、14歳の時だった。父の仕事の関係で中東に住んでいた頃のことだ。神戸に戻り、普通の学生時代を経て再びバルセロナを訪れたのはその14年後の1996年。スペイン語研修生としての赴任で、1年をこの地で過ごした。三度目にバルセロナを訪れることになった今、研修時代から約14年の時が流れている。  自分が海外で仕事をしたいと思ったのは14歳の頃である。今思えばランブラス通りだったろうか、親父に連れられて家族で冬晴れの繁華街を歩いている時に見た、道端で売っているLPジャケットの夕暮れのデザインがすごく素敵だと思った。当時住んでいた中東の夕暮れ時にいつも見ていた橙と深い藍色のグラデーション。その頃の自分を取り巻いていた様々なイメージが、そのLPジャケットが置かれた街角のシーンに凝縮されているような気がした。いつかまた、この世界に戻ってきたいと思った。  自分...の力で海外で働く切符を手に入れるのだという思いは、その後もずっと持ち続けた。入社5年目で漸くその願いが叶って、1年を過ごすことになった街がバルセロナだったというのは、今にして思えば偶然以上の何かがあったような気もする。  研修生としてバルセロナに来て半年が過ぎた頃、僕は、「自分は近々結婚するのだ」と、何故か突然そう思った。付き合っていた人がいたわけではないのだが、何故か確信的にそう思った。実際僕は、その数ヵ月後のバルセロナ滞在中に不思議な縁で日本にいる女性を見合いのような形で紹介され、帰国後その女性と会い、そして結婚した。  だから、自分にとって、妻と二人の子供達を連れてバルセロナを訪れるということは、何か特別な意味があるような気がしていた。旅行前の子供達の風邪の看病が祟ったのか、生憎妻はバルセロナに来てから体調が優れず、自分が子供二人を連れて街を歩いた。バルセロネータの海岸で、陽だまりの中で波と戯れる子供達をぼんやり見ながら、何かそこに、あの頃と変わらない一貫したメッセージがあるような気がした。  夜、ホテルに帰って皆が寝静まった頃、ふと目が覚めて、そのメッセージが「祝福」であることに気がついた。  これから先14年を考えてみる。子育てと仕事の両方で、仕上げに向かって邁進する時代ということになるだろうか。その辺がひと段落したら、またこの街を訪れてみるのもいいかもしれない。


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