プラットホームでフルーツバスケット
日本に初めて行った現地社員が帰国後に語る「日本での驚き」はほぼ下記に集約される。 1.人々が皆 礼儀正しく親切。(ほぼ全ての人がそういう。) 2.英語が殆ど通じない。外国人に対してシャイ。何かを聞こうとすると目を伏せて足早に逃げる人もいる。 3.道や公共施設が綺麗。 4.飯がうまい。バリエーションが豊富。結構安い。 5.看板その他の表示の殆どが日本語で全く分からない。 5.電車が信じられないぐらい時間に正確である。 今回の話しは、その電車についてである。 欧州は引き続きの雪景色だが、自分のカンパニーカーは未だにスノータイヤを履いていない。在庫が全くないのである。今日はアントワープに出張に行く予定があったが、さすがにその状態で車で行くのは危険なのでフランス新幹線Thalys(タリス)で行くことにした。家の近くの駅から在来線でスキポール空港駅まで行って、そこでタリスに乗り換えるのである。 日本とは違い欧州の新幹線は在来線と同じ軌道とプラットホームを使っているが、到着する新幹線のホームが土壇場のタイミングも含めてころころ変わるというのはよくある話しで油断できない。今朝も、駅のアナウンス自体「5番ホームか6番ホームのいずれかに到着します。」と言っていた。時間だって、表示もアナウンスもあてにならないことの方が多い。 今回驚いたのは、到着した車両の並びが予定とは前後全く逆だったことである。自分が乗るのは8両編成の1号車だったが、駅の表示でも事前のホームのアナウンスでも「進行方向先頭が1号車」と言っていたのでその位置に並んでいた。 ほぼ定刻にタリスがホームに滑り込んできて「お、なかなかやるじゃん。」と思ったら、先頭車両に8号車の表示が。おいおい堪忍しろよと思いつつ、荷物を抱えて急いで8両分の移動を開始した。当然他の客も自分の指定車両の前に陣取っていたので、ホームは一気にフルーツバスケット状態の大混乱である。 *「フルーツバスケットって何?」って方はこちらをどうぞ。 http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%95%E3%83%AB%E3%83%BC%E3%83%84%E3%83%90%E3%82%B9%E3%82%B1%E3%83%83%E3%83%88_ 遊び(椅子取りゲームの部分ご参照) ちなみに、このフルーツバスケット状態は、ドイツ向け新幹線ICEの独蘭国境で必ず見られる現象でもある。何故かオランダから来た新幹線とドイツから来た新幹線は国境の辺鄙な駅で待ち合わせ、乗客を乗り換えさせるのである。その後、ドイツから来た車両はドイツに折り返し、オランダから来た車両はオランダに帰る。 車両そのものは全く同じ形状のものなので、何の理由でそういう乗り換えを行うかやや不可解なのだが(乗員に対する配慮か?)、とにかく乗客は強制的に乗り換えを強いられ、しかも向かいに止まっている車両の号車が前後逆の並びになっているので、周りに何もないような辺鄙な駅で、車両2編成分の乗客の「点対照」的な移動によるフルーツバスケットごっこが展開されるのである。何やら横川の峠の釜めし的で風情があるといえるかもしれないが・・・。(比喩がちょっとマニアックすぎるか。) 日本では分単位の正確さで電車が往来する。日本に行ったメキシコ人が興奮気味に語っていたが、ある時彼が東京の地下鉄に乗ろうとすると自分の横から車椅子を持った駅員が進み出てある乗降位置の脇に待機した。やがて到着した地下鉄の扉が開くと、中から足の不自由な方が出てこられて車いすに乗った。あれだけ頻繁に来る地下鉄で、しかも車両と扉まで限定してそこまでの対応が出来るなんて、日本人達はホントただ者ではないとそのメキシコ人は力説していた。メキシコ人でなくても、多くの外国人にとってこの光景は結構驚きだろう。 日本では当たり前のサービスも世界水準対比でみると神業に近いという例は、実は他にも結構ある。こういうところは日本人ももっと素直に自信を持って良いと思う。 ちなみに、このフルーツバスケットという遊戯は、僕が育った神戸では「大あらし」と呼ばれていた。自分のとしてはそちらの呼称の方が馴染みがあるのだが、全国的にはフルーツバスケットという呼び方の方がポピュラーなようなので、そちらを使った次第である。