フラメンコと線香花火
前回のバルセロナ出張中にフラメンコを見に行った。何度か行ったことのあるタブラオ(フラメンコを見せてくれるショーハウス)での1時間半ほどのショーだったが大いに満喫した。一緒に行った出張者もすごく満足してくれたようで良かった。 スペインは、実際に行ってみると地域独立性の極めて高い国で、政治の中心マドリッドがあるカスティリア、バルセロナがあるカタルニア、南部のアンダルシア、そして北西部のバスク等、それぞれの地域が殆ど独立国家に近い自己認識を持っており、風土、文化も随分異なる。 アンダルシアは、レコンキスタの舞台でありアラブとの文化融合の匂いを多分に残す ある意味最もスペインらしい地域だが、フラメンコはその文化の一つの典型である。 魂の嘆きのような歌声。ギターと手拍子。そして、生きることの苦しみ、喜びの全てを大地に叩きつけるような激しいステップ・・・。 女性の踊りも良いが、なんといっても圧巻なのは男のダンサーである。その「溜め」、そして「見栄」の切れ味には、他にはない凄味がある。会場の空気そのものを極限まで凝縮し、その激しいリズムの合間に一瞬の静寂を作り、それを一気に昇華させる。その凝縮と一瞬の静寂の美に、僕はいつも線香花火を連想する。津軽三味線にも、それに似たものがあるかもしれない。 この日も、会場の客の実に半分は日本人だった。今時はヨーロッパのどこに行っても街に溢れているのは中国人観光客ばかりで、日本人は韓国人よりさらに少ないような印象すらある。それを考えると、フラメンコ会場のこの日本人の数は、日本人のフラメンコ好きを物語っているといえるだろう。フラメンコを習っている人も、あの独特のカスタネットの購入者も、スペイン本国以外では日本人が圧倒的に多いという話しをバルセロナ在住中に何度か聞いたことがある。やはり、我々の感性に訴える侘び寂び的な何かがあるのだろうか。 フラメンコと津軽三味線の競演を、いつか見てみたいものである。